出棺のとき、プッチーニ作曲のトスカ『星も光りぬ』という曲を繰り返し流してもらった。生前、父が冗談交じりで「葬儀の時は『星も光りぬ』を流してくれるだけでいいよ」と言っていたのを思い出したからだ。父のレコードコレクションの中に、ジュゼッペ・ディ・ステファーノのオペラリサイタルのレコードがあった。深く静かに悲しみを湛える美しい曲だった。（『アルツハイマーという奇跡』より）

　
　作曲　プッチーニ
　曲名　歌劇 　トスカ　 第3幕より　星も光りぬ
　歌手　ジュゼッペ・ディ・ステファーノ
　指揮　エレーデ
　演奏　ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

冤罪によって死刑を宣告されたカヴァラドッシは、死刑を前にして、星空を仰ぎながら、恋人トスカの面影を偲んで静かに歌い出す。